WORKSHOP TITLE

香りを紡ぐ

TEACHER

HELLO GARDEN

REPORT

この授業は、「新しい暮らしの実験広場」をコンセプトに、暮らしを楽しくする様々な実験的なイベントやワークショップなどの取り組みを行う広場を運営されているHELLO GARDENさんによる授業です。ななめな学校としては、初めて大人を対象とした授業を開きました。

「香りを紡ぐ」をタイトルとしたこの授業では、香り、記憶、ことば、の間を行ったり来たりしながら、自分のオリジナルの物語をイメージした香りをつくります。

香りを、言葉にする

授業が始まると、参加者の机の上には、番号が書かれただけのボトルが並んでいます。このボトルに入っているのは、それぞれ異なる香りのするエッセンシャルオイルなのですが、名前は分かりません。

授業は、まず、これらの香りを嗅いで、それを言葉に表すことからスタートします。言葉を記入するシートには、「季節」「色」「温度」「フリー」と書かれた欄があって、夏っぽい、、水色?、28度ぐらい、夏の青空、、のように、参加者それぞれが、抱いた香りの印象を、書き出していきます。

同じ香りでも、人によって抱くイメージは様々、参加者同士お互いにシートを見せ合ったりして、なるほど〜、といった声が上がったりすることも。普段は、「何となく良い香り」と認識したまま言葉にしないようなことが、改めて言葉にしてみることで自分の記憶や匂いから想起する情景へと繋がっていきます。

色んな種類の香りを嗅ぐので、参加者の机の上には、鼻の感覚をリフレッシュするためのコーヒーバッグも置かれていました。会場は、いい匂いで溢れています。

自分の机の上にあった香りのシートをすべて記入したら、番号が書かれたボトルごとに、みんなが書いたシートが集められます。

 

1枚の写真から物語をつくる

次のステップでは、一度、香りから離れて1枚の写真から自分の妄想を膨らませた物語を考えます。この物語が、最後につくる香りのテーマとなります。

参加者は、ホワイトボードに貼られた色んな写真から、ピンと来たものを1枚選びます。

配られているワークシートには、「主人公」「場所」「季節」「気温」「時間」といった物語りのシーンのヒントになるような記入欄や、思いついたキーワードを書き込む欄が用意されていて、そこに自分で書き込んだメモをヒントに、物語を考えられるようになっていました。最初は、写真を見つめながらじっとしていた人も、筆を取ると、スラスラと物語を書かれていたのが印象的でした。

香りを紡ぐ

次のステップでは、自分の考えた物語をイメージした香りを、いくつかのエッセンシャルオイルを調合してつくります。

机の上にズラリと並んだ30種類の香りのボトルの下には、それぞれのオイルが染み込まされている紙のスティックと、最初のステップで、みんなで書き出した香りのイメージを言葉にしたシートが置かれています。そこに書かれている言葉を見たり、自分の考えた物語の情景に思いを馳せたりしながら、どんな香りの組み合わせにするかを考えていきます。

表現したいイメージが「宇宙っぽい感じ」だったとしたら、それをどんな香りで表すのか、温かい印象なのか、冷たい印象なのか、それは香りでどう表すのか、同じ香りの組み合わせだったとしても、その配分はどうするのか、など、物語を香りに変換するという、新鮮な作業に想像力を働かせながら取り組みます。

香りの組み合わせが決まったら、最後は、自分で選んだエッセンシャルオイルに、無水エタノール、精製水を加えて、ルームスプレーにします。まるで理科の実験のようで、みなさん真剣な眼差しで作業をされていました。

ボトルのラベルは、自分で選んだ写真のタイトルが空欄になったものが用意されていて、そこに自分が書いた物語のタイトルを書き込んで、自分だけのルームスプレーの完成です!

2日間で、合計50名近い方が参加されましたが、同じ写真を選んだ人でも全然違うタイトルが付いていたり、香りの組み合わせも様々でした。
人によって、イメージから物語を考え出したり、それを香りに変換したりする過程で、色々な違いが生まれていくのが、とても興味深く、参加者同士も、お互いに作った香りを嗅いだりして、面白がられていたようでした。

 

香りと記憶と言葉と暮らし

香りについての記憶は、単に好き嫌いということだけでなく、様々なイメージや言葉、或いはそのどちらにも含まれない感覚的なものが絡まり合って蓄積されているものなのかもしれません。

この授業では、そういった香りと記憶の関係を、言葉をつかって解きほぐしつつ、物語というアウトプットに沿って再構築していくことで、思いもよらない香りに自然と出会えるようになっていました。

また、自分が作った香りは最終的にルームスプレーという形で持って帰れるようになっていて、日々の暮らしの中で使うことができるという、HELLO GARDENさんならではの、暮らしの中の様々な事象を掘り下げ、そこに想像力を加えたものを、また暮らしの中に取り込んでいけるという、実践的な授業となっていました。

 


 

HELLO GARDENさんでも、ななめな学校のこの授業のレポートを書かれています。30種類の香りの実際の名前や、参加者の皆さんが考えられた、香りのタイトルや、調合も書かれていて、とても面白いので、是非こちらもご覧ください!
https://note.com/hellogarden/n/n7e487150bad5

 


 

Text: Yasuaki Mio

写真

HELLO GARDENさんのプロフィール

西千葉エリアにて、それぞれの楽しい暮らしを見つけるきっかけづくりを行う、まちの実験広場です。

https://hellogarden.jp/

ななめな学校4の授業 REPORT