WORKSHOP TITLE

空想地図を
つくろう

TEACHER

今和泉隆行先生

空想地図作家

REPORT

7歳から空想地図を書き始めた!

極めて現実的で日本のどこかの都市のようでありながら、実際には存在しない都市「中村市<なごむるし>」の地図(空想地図)の作者である今和泉先生の授業は、参加者それぞれの頭の中だけにある「空想地図」を実際にカタチにしてみるという内容でした。

今和泉先生は4歳でバスの路線図に興味を持ったのをきっかけに地図が好きになり、7歳から空想地図を書き始めたと言います。

実際に空想地図を作ってみよう

教室の前方には今和泉先生が作成した「中村市」の大きな地図が貼られていましたが、空想地図の細かい説明や作り方のポイントなどの説明は一切なく、先生が用意して下さった空想地図作成用のキットの説明だけを簡単に行い、「ではどんどん作ってみよう!」と作業開始になりました。

キットには駅やスタジアムなどの「図」と、農地や住宅地、郊外住宅地といった「地」が揃っています。また、緑系や青系の色紙も用意され、山や森は緑系、海や川は青系の好きな色紙で表現するよう、そしてキットに無い施設や地名などは用意されているペンで自由に書き込んでいくよう、アドバイスがありました。

どんどん手を動かしてみる

まず「地」となるベースを貼って、上から重ねて「図」を貼っていく参加者もいれば、町の核となる施設を適宜配置してからその間を想像していく参加者、鉄道の路線から描き出した参加者や山・川・海といった地形から作り始めた参加者まで、空想地図の作り方は様々でした。

考え込んでしまった参加者には今和泉先生が「やってみて違うなと思ったら上から貼りなおせば大丈夫だよ。失敗してもやり直せるからどんどんチャレンジしてみよう」とアドバイスします。

周りの参加者のアイデアも取り入れてみる

作業の中盤で、今和泉先生が何人かの参加者の作品(途中の状態)をスクリーンに投影し、その特徴を解説しました。投影した作品の作者に対しては、残りの作業時間で期待する部分を伝え、その他の参加者には「自分がまだやっていないことや考えていなかったアイデアがあればどんどん取り入れてみてね」とアドバイスします。

出来あがった全員の空想地図を、
今和泉先生が読み解いていく!

その後も各々自分の空想地図作成に没頭し、作業を続けます。

授業の最後は、それぞれの地図をスクリーンに投影しての発表会です。

発表会は、今和泉先生が参加者それぞれの地図を読み解き、気になったポイントを作者に質問する形式で行いました。

自分が作った地図を今和泉先生が読み解き、「右側にお城があるのでこの周りから町が発展したんですね。左下はきっと埋め立て地ですね。左上に大きな駅があるのに周りにはあまり住宅がないですね。では、ここにどうして駅ができたのか聞いてみましょう」などと、分析したうえで質問してもらえるとても貴重な時間でした。

参加者それぞれに個性的で、多様な地図がありましたが、今回のワークショップを通して今和泉先生は「海が多く出てきましたが、自然な海岸線よりも埋め立て地が多かったですね。また、海の上にも構わずに線路を通してる地図が沢山ありました。これらは全て千葉市の特徴です。みんな無意識に自分の町のことを理解していますね。例えば、海のない埼玉県で同じ授業を実施したらこうはならないと思います。」と分析されていました。

物事を理解する自分だけのものさしを持つ

今和泉先生は「色々なことにチャレンジして、やめてしまったものもあるけれど空想地図をつくることだけは7歳のころからずっと続けています」とおっしゃいました。

また、「実際の街を歩いて、地図を確認することでその町の成り立ちや習慣が理解できます。中村市の空想地図では、中村市にある空想の飲食店やスーパーのロゴなどもデザインしていますし、派生して“中村市内の落とし物”も作成しています。例えばOLの財布の落とし物の中には中村市の交通系ICカードや社員証、ポイントカードやレシートが入っています。

実際の社会や文化の成り立ちを詳細まで理解して初めて、中村市の地図も落とし物も作成できるので、ある意味では身の回りの様々な出来事を把握するために空想地図をつくっているのかもしれません。」と仰っていたのが非常に印象的でした。

空想地図をつくるにあたり今和泉先生は一切ルールを設けませんでした。また授業を通して、参加者に「実際の地図でこんなことはありえないよ」などと否定的な言葉をかける場面は一切ありませんでした。

現実にはあり得ないような街の地図が出来上がっても「これは未来の都市で、住人はみんな空を飛んで移動しているんですかね?」ととても柔軟にその地図を読み解いていました。

自分独自のものさしを持つことで、固定観念に縛られずにフラットに物事と向き合え、解釈していくことができるのだと、今和泉先生から教わった気がしました。

Text: Yuta Hosoya

写真

今和泉隆行 さんのプロフィール

7歳ごろから実在しない都市の地図(空想地図)を描く。大学時代に47都道府県300都市を回り、2015年に株式会社地理人研究所を設立。著書に「みんなの空想地図」(白水社)他。
http://imgmap.chirijin.com

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