WORKSHOP TITLE

紙の活字と光るインキの
不思議ラボ

TEACHER

和田由里子 先生

Paper Parade Printing

REPORT

紙活字
=活版印刷の面白さ+文字に装飾できる楽しさ

和田先生の授業はご自身が考案した「紙活字」を用いたものでした。

「紙活字」とは、通常金属(古くは木)を用いる活版印刷の活字を厚紙で製作したもので、一般的な活版印刷の面白さ(活字を並べて単語をつくり、インクをつけた活字組みの上から印刷紙を押し当てて刷るという楽しさ)に加えて、簡単に削ったり引っかいたりして表情をつけられるという紙の特性を活かし、子供たちの自由な創作意欲を掻き立てる内容でした。

別の機能を持った道具を転用し、
面白い模様をつけてみる

まず参加者に配られたのは猫の顔のシルエットの紙活字です。その活字に和田先生が用意した道具(スプーンやフォーク、抽斗ノブなど)から一つを選んで傷をつけていきます。まずはみんな目や鼻やひげといった猫の顔を描いていきます。思うように顔がかけたらインクをつけて印刷してみます。インクの量や傷の深さや紙の表裏や押し付ける強さによって印刷のされかたは様々です。そして一度すってみたら今度は別の道具を使って更に模様をつけていき、また印刷。和田先生は「傷つけるのも印刷するのもどんどん試してみましょう」と子供たちにアドバイスします。


一通り刷り方が分かったところで次は数字に挑戦です。数字は猫の顔と違い、目や鼻といった手掛り(書くべきもの)が無いため、参加者はみな、より自由に道具の特性を引き出すような模様をつけ(丸い木球を押し付けるとクレーターのように丸い模様がつけられることを発見した参加者もいました)、どんどん刷っていきます。一枚の紙に何度も同じ数字を刷って見比べてみると、数字を整然と並べる参加者もいれば、数字同士を重ね合って刷った参加者もいて様々で、和田先生はそれらの個性を褒めながら紹介していき、文字につけた模様や印刷の濃さだけでなく、文字の並びもデザインの要素であることを説明します。

文字組やレイアウトを考え、
「最高の一枚」を印刷する

その後、DOGやZOOといった文字組に挑戦し(すべての文字に同じ道具で同じような模様をつけるのか、それぞれ全く異なった模様をつけるのかにも個性が表れていました)、最後に授業で作成した全ての活字を好きなだけ使い(すべて使っても一つだけ使ってもよい)、最高の1枚を印刷しました。

活字を印刷するだけでなく、ローラーで紙に直接色を付ける参加者や意図的に一文字だけ紙の裏から印刷する参加者、同じグループのメンバーが作った全てのOをあつめてZOOOOOOOOを作った参加者もいました。それらすべての作品を和田先生は一つ一つ丁寧に講評し、褒めていきました。

怖がらずにトライし、後から評価する

デザインや芸術に答えはなく、それぞれの個性がそれぞれの作品に現れ、そのどれもが素晴らしいということ、本人が失敗したと思った印刷や模様付けも他人から見ると特徴を持った魅力的な作品であるとうことが和田先生の講評を通じて参加した子供たちに伝わっていたと感じます。

また、途中の数字やDOG、ZOOという紙活字は与えられるのでなく、黒い紙に特殊塗料で印刷された暗号をブラックライトで照らし、問題文の答えを読み取って導き出す形式となっており、塗料や印刷の面白さにも触れられる内容でした。

ほぼすべての参加者が作成した紙活字と印刷物、特殊塗料での印刷が施された黒い紙を持って帰ったという事実と授業後に「家でまた印刷したい」という参加者の保護者から塗料や印刷方法の質問を和田先生が受けていた様子が、授業が活版印刷及び紙活字への興味を誘発する充実した内容だったことを示していました。

写真

和田由里子さん のプロフィール

多摩美術大学グラフィックデザイン科卒業後スイスバーゼル造形学校在籍中の2009年から紙活字の制作をはじめる。 2015年に紙活字を発表し2016年からPaper Parade Printingとして紙活字作品制作やワークショップなどの活動をしている。

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