理論と実践で「鋳造」を学ぶ
鋳造ズのお二人の授業は「鋳造」という工芸技法を実際に体験してみること(実践)と、鋳造を可能にしている金属の性質を学ぶこと(理論)がセットになっていました。
理論編①:類似としてのチョコレート、たい焼き、大仏
まず鋳造という技法について先生からスライドを用いて説明がありました。鋳造とは鋳型を作成し、そこに液状に融かした金属を流し込み、冷やして固めることで目的の形をつくる加工方法で、身近なチョコレートやたい焼き(チョコレートは冷やして固めるが、たい焼きは熱して固めているという違いがある)と同様の加工方法だとイメージすればよいことや、鋳造の特徴は成形したい金属自体を加工するのではなく先に鋳型をつくることで、鋳型さえ作れば同じものをいくつも作れる点にあることを学びました。
また身の回りにある鋳物の例として昔の硬貨やフライパン、奈良の大仏などがあることを学びました。
実践編①:千葉の自然を型取り、鋳型をつくってみる
次にドングリや落花生、貝殻といった千葉の自然を油粘土に押し当てることで型取りし、鋳型をつくってみました。そしてそこに金属(錫+ビスマス合金)を流し込み、冷やして固めることで鋳造の原理と原型が金属に写し取られた時の高揚感を体感しました。
実践編②:好きな形を塑像し、鋳型をつくってみる
いよいよ本授業のメイン、それぞれに好きな形を石粉粘土で塑像し、固まった石粉粘土を型取りして鋳型をつくる作業です。今回は片側から金属を注ぐため、金属を注ぐ面には模様がつけられない(チョコレートのように一面は真っ平になる)ことを念頭に置いて、型取り可能な形を塑像していきます。細かい造形よりも大ぶりな表現の方が上手に鋳造できるなどのアドバイスを受けながら皆思い思いに原型を作りました。そして原型をもとに鋳型作成と金属の流し込みまでを行いました。
理論編②:金属の種類と融点(固体が解け、液体になるときの温度)
鋳型に流し込んだ金属が冷えるまでの間、先生から金属の種類や融点についての授業がありました。本日の授業で使った金属は錫とビスマスの合金であり、錫の融点は232℃、ビスマスの融点は271℃ですが、それらをミックスさせた合金の融点は139℃!
これは金属が混ぜ合わせると融点が低くなるという不思議な性質を持っているからとのことでした(一部例外アリ)。
「もの」への愛情が素材への興味を呼び起こす
最後に固まった金属を鋳型から外し、みんなの作品を並べて互いに鑑賞しました。イメージした通りの作品が出来た参加者もいれば、原型が細かすぎてうまく型取りできなかった結果、思い通りにはいかなかった参加者もいましたが、持ち帰る金属を悩みに悩んで決められない参加者もいるほど(予算の都合上、持ち帰れるのは実践①か②のどちらかの金属だけでした)、皆が楽しみ、思い入れのある作品をつくることの出来ました。
また鉄の融点は1538℃など、一般的に融点が高い印象のある金属ですが、融点が-19℃で日本の自然環境下では基本的に固体にならない不思議な金属(ガリンスタン)があるといった講義が、金属の凝固を待つ間に組み込まれることで、子供たちの金属への興味がより強く呼び起こされるように構成されていました。
Text: Yuta Hosoya