WORKSHOP TITLE

書写の道具でつくろう
動物パラパラアニメ

TEACHER

NARAMIX 先生

画家・美術家

REPORT

絵を動かすということ

鳥や自然を題材にドローイング作品や映像作品などを制作されているNARAMIX先生による授業です。
参加者は、普段の学校生活で使っている書写道具を持参していました。
いつもは字を書くための書写道具ですが、この授業ではそれを使って絵を描き、パラパラ漫画のように複数枚の絵を繋げてアニメーションを作ります。
日頃からテレビやインターネットで見る機会の多いアニメーションですが、この授業では、実際に「自分の描いた絵を動かす」ことを体験しました。

最初にNARAMIX先生が制作された映像作品を見ました。 海の風景の映像に、墨と筆で描かれたアニメーションが重なった作品です。
参考:“純然たり”(外部サイトへ移動します)

先生は、作品のために半紙に描いた原稿もあわせて見せてくださり、何枚あると思う?と尋ねます。参加者は「30枚?」と答えますが、なんと答えは「300枚」と、想像を超える枚数の多さでした。子供のころから書写の道具が好きというNARAMIX先生。鉛筆や書写の道具など学校で普段つかっているもので面白いことができるようにと、今回の授業内容を考えてくださいました。
テーマは「動物パラパラアニメ」です。5、6人の班を作り、まずは一人ずつ連続した動物の絵を描いてアニメーションを作ります。

先生から「自分の動かしたい動きを考えながら次のカットを描いていきましょう」とアドバイスがあります。今回は15枚〜30枚くらい描くことを目標に制作を進めましたが、6枚くらいでも十分動くというお話もあり、枚数をたくさん描くこと以上に、次の動きを考えて描くということが重要なのだとわかりました。

書写の道具を使って描いてみよう

筆に墨をふくませ、考えたストーリーを半紙に描いていきます。最初の一枚を、スルスルと描き始められる参加者もいれば、何を描くか迷いながら慎重に描き進める参加者や、「思い切って描いたけど失敗しちゃった!」と笑顔でやり直す参加者もいました。
みんな真っ白な半紙に向かって思い思いに1カット目を描きました。

一枚目の絵が描けたら乾かして、その上に半紙を重ね次の絵を描きます。このとき、薄い半紙の透けを活かして前の絵を透かし確認しながら、動きの連続性を意識して、次のシーンを描いていきます。

枚数を重ねていくことで、半紙の質感や、墨のにじみなど道具の特性もわかってきます。

最初はにぎやかに描き始めていた教室の中も次第に集中した空気に。参加者は黙々と描き進めていきます。

みんなのパラパラアニメをつなげよう

自分のパラパラアニメが完成したら、今度は全員のパラパラアニメをつなげることにチャレンジします。その方法は、隣の人の一番最後の絵をもらい、自分の1枚目の絵と繋がるように、その間のパラパラアニメを描く、というもの。
普通は、アニメーションは描いた枚数に達すると終わってしまいますが、これにより、班のみんなのアニメーションが繋がるため、循環する終わりのないアニメーションを作ることができます。
とはいえ、隣の参加者の絵には自分のシーンとは全く違う動物やシチュエーションが描かれているので、繋げるのはなかなか大変です。
みんな想像を膨らませ、必死に二つのストーリーを連続させます。結果、参加者個々人だけでは思いつかなかっただろう、沢山の想像を超えた絵が描かれていきました。

描いた絵を撮影しよう

十分な枚数を描いたところで、次は撮影です。描いた絵をコマの順番で、一枚ずつタブレット端末のスキャンアプリを使用し撮影しました。

1班200枚~300枚の原稿を取り込んでいきます。撮影する人、原稿を並べる人、撮影した原稿を回収する人と、自然にチームワークも生まれ、単純作業がはかどります。

完成したパラパラアニメを再生してみよう!

完成したパラパラアニメの上映です。大きなスクリーンに、スキャンした絵を連続再生すると、絵が動きだしました!参加者も完成した映像の仕上がりに自然と笑みがこぼれます。それぞれに絵の動きやストーリーの面白さがあり、どの班の作品も個性的な仕上がりとなりました。

特に、班の中でアニメーションをつなげるという「課題」が、思いがけない形やストーリー展開を生みだし、作品をさらに面白いものにしていました。

アウトプットの手法選びも表現の一部

今回は作品を書写道具で制作しましたが、学校で文字を書くための道具として使っている筆と墨で絵を描くということは、新しい体験だったのではないでしょうか。墨特有の黒の強さや、かすれ、半紙にじんわりにじむ描き心地…鉛筆や絵の具などとは違った独特な雰囲気の絵に仕上がりました。また半紙の「薄く、すこし透ける」という特性も、パラパラアニメをつくる上でとても適していました。

何を使ってつくるかということは作品の仕上がりに大きく関わる部分です。専用の道具を使うことももちろん良い方法のひとつですが、意外なものが制作にぴったりの道具だった!ということもよくあります。その作品に適した道具を見つけ出すのも、表現する楽しさの一つなんだなと感じました。

また、隣の参加者の作品と自分の作品を繋げることは、自分の想像を誰かの想像と繋げる事であり、自分だけでは生まれない発想が引き出されるとともに、自分が描いた絵が自らの想像を越えて変化していく楽しさを実感することが出来ました。

 

Text: Takeshi Doi

写真

NARAMIX さんのプロフィール

画家・美術家。鳥や自然を題材にしたドローイング作品を主に制作する。2014年に千葉市芸術文化新人賞を受賞し、2016年秋に開通したJR千葉駅・モノレール千葉駅連絡通路の壁画を担当。
https://www.naramix.com

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