WORKSHOP TITLE

自分のカラダをつかって
コマ撮り映像をつくってみよう

TEACHER

岡崎智弘先生

デザイナー

REPORT

はっさくの解散!

グラフィックデザインや映像の制作をされているデザイナーの岡崎先生の授業は、先生が手掛けた「NHK デザインあ はっさくとぶどうの解散!」を鑑賞するところからスタートしました。
はっさくは皮をむくと白い袋があらわれ、白い袋をむくとオレンジ色の果実があらわれます。そして、果実をよく見ると小さな粒が集まって出来ています。
「はっさくの解散!」ははっさくの実を解体し、上記のようなはっさくの構成要素の全てをあきらかにする映像です。そして、ひとの手によってはっさくが解体されるのではなく、はっさく自身が意思をもって動き、各構成要素へバラバラと解散していく表現となっています。

「はっさくの解散!」は「映像」といってもはっさくを実際に(見えない糸などで)動かし、それをビデオカメラで撮影している訳ではありません。実は「コマ撮り」という手法でつくられているのです。

参考映像:[デザインあ] はっさくとぶどうの解散! | NHK(YouTubeに移動します)

「コマ撮り」の仕組み

では、コマ撮りとはいったいどのような手法なのでしょうか。
それは「写真(静止画)」をたくさん組み合わせて動きをつくるという方法です。少しずつ変化させて撮った写真をつなぎ合わせると滑らかな映像ができるのです。
「コマ撮り」映像をつくるのには、完成形をイメージしたうえでシーンを変化させ、撮影していくことが大切で、その際、動き方のルールを決めて一枚ずつ撮影していくことが大事だよと岡崎先生は説明します。
例えば、トウモロコシの粒が列をなして歩いているようにみえる映像は、トウモロコシの全ての粒を規則正しく、人間が歩く時の動作と同じように「右を斜め前に出して撮影、次に左を斜め前に出して撮影」と繰り返すことで表現しています。また、ブドウの粒から種が飛び出すさまは、種を直線的に動かすことで表現しています。

自分のカラダを動かして写真を撮影してみよう

いよいよ、実際に自分のカラダを少しずつ動かして、写真を撮影してみましょう。10枚撮影し、それらを1秒の動画にします。床には5か所の目印がついていますので、5人一組で同時に、まずはその場でそれぞれに動いてみます。
その際に「映像がループする(最初と最後がつながる)ように動きを組み立ててください」と岡崎先生からお題が出されます。どのような動きをつくりたいかをイメージし、10カットでその動きを完結させるには1枚ごとにどれくらい体の動きを変化させれば良いかを考えて、実践してみます。


教室の前方には大きなスクリーンがかけられており、そこには現在の教室の様子が映し出されています。スクリーンはカメラと連動しており、一枚撮影するとその画像を確認することができます。
現在自分がどのように映っているかをひとつ前の画像と見比べ、イメージ通りに連続して見えるかを確認しながら、動きを固めて撮影を進めます。



全てのカットを撮り終えたら、つなげた映像を確認してみます。その場で動くだけでも様々な動き方があり、参加者によって実践してみた動きは千差万別でした。イメージ通りの映像になった参加者も、思った通りの映像にならなかった参加者もいましたが、カットごとに小さく(細かく)動くと滑らかな映像に、大きく動くと早い映像となることが分かりました。

参加者全員で一つの映像をつくってみる

次に、参加者全員で一つのコマ撮り映像をつくってみます。画面の右端から左端へ参加者全員が順番に移動していく映像です。先程の5か所の床の目印を目標に、10枚(10回のアクション)で左隣の目印まで移動していきます。




10×6回のアクションは全て自由なので、実際に歩いてみえるようにアクションをとる参加者もいれば、両足を揃えて地面につけたまま地上を滑って移動して見せようと考える参加者や各10枚の中に戻る動作を組み合わせてみた参加者、友達同士で物語をつくり「大きなかぶ」のように最後の一人を数人で引っ張っているように見せた参加者もいました。

5人ずつで自由に動いてみる

最後に、今まで行った2パターンのコマ撮りの経験を踏まえて、5人一組で自由に動いて映像をつくります。
今回は最初のお題と違い、カメラに写る範囲であればどのように動いても構いません。また、全部で20コマ撮影しますが、途中から人がいなくなっていっても構いません。


チームで作戦会議をし、全員で一つの物語をつくったグループもあれば、それぞれが空間を自由に使って思い思いに動いたグループもありました。また、体だけでなく会場にあったガムテープをカメラの近くで持ち、輪っかのフレームを画面内に導入したチームあれば、教室の右側の収納に途中で隠れ、次のコマで左側の収納から出てくるという瞬間移動を実現させた参加者もいました。

カラダと技術を組み合わせて表現をつくる

最初に岡崎先生から教えてもらった動きのルールを意識しつつ、瞬間移動や空中移動(撮影時に毎回ジャンプする!)など、コマ撮りだからできることそれぞれに見出し、全員が楽しみながら、思いついた発想をチャレンジしていたことが印象的でした。
そしてリアルタイムに教室の様子がスクリーンに映し出され、撮影した写真と現在の様子を瞬時に切り替えて見比べることができるデジタルな技術と、自分のカラダを動かすという文字通りフィジカルなアクションを組み合わせて「コマ撮り」というルールに則って表現をつくるという、盛り込まれた沢山の楽しい要素を、複合的に組み合わせることでその楽しさが何倍にも膨れ上がっていく、魅力的な授業でした。

Text: Yuta Hosoya

写真

岡崎智弘 さんのプロフィール

1981年生まれ。東京造形大学デザイン学科卒。2011年9月よりデザインスタジオSWIMMINGを設立。代表作に、「Eテレデザインあ解散!コーナー」など。
http://www.swimminginc.jp/

ななめな学校1の授業 REPORT