鳥面制作を通して自分の新たな一面と出会う
2019年度最初の「ななめな学校」はななめな学校史上初めての「来場者がその場で誰でも参加できる」スタイルのワークショップでした。

千葉の夏に欠かせない「親子三代夏祭り」にあわせて千葉市美術館のさや堂ホールで毎年開催されている「美術館で縁日気分!!」に出張するということで、お祭りの要素にいかに“ななめな視点”を組み合わせられるかを考えました。
そして、2017年にななめな学校で先生をしていただき、別人格の「鳥人間」としてパフォーマンスも行っているNARAMIXさんの作品「自画像 鳥人間」を展開し、NARAMIXさん監修のもと、鳥人間のお面(=鳥面)をつくるワークショップを行いました。
またファシリテートはWiCANに担当していただきました。



特徴の書かれた3枚のカードを引いて、
鳥のビジュアルを想像し、制作する
参加者はお面のベース(組み立てると鳥面ができます)を受け取ると同時に3枚のカードを引きます。それぞれのカードには鳥の「性格」、「生息地」、「なき声」が記されており、参加者はそのキャラクターから自分だけのオリジナルな鳥を想像し、お面のベースに好きな色のペンで模様や文字、具体的な羽や冠などを描き、着彩していきます。
手に入れた3つのキャラクターを手掛かりに想像を膨らませる参加者もいれば、キャラクターに困惑して悩む参加者もいました。また3枚のカードにはとらわれず、思うままに鳥面を作成していく参加者もいました。
作業テーブルには目や鶏冠用の様々な形の厚紙パーツも用意されており、参加者は制作する鳥面のイメージに合わせて好きなパーツをお面の好きな位置に糊付けし、鳥面のキャラクターをより明快なものに仕立てていました。



鳥面を被って撮影する
自分だけの「鳥面」ができたら3つのキャラクターを書いた紙を持ち、「鳥面」をかぶって撮影します。みんなの鳥面が集まるとその日だけの図鑑である、「ちば鳥面ペディア」が作成できます。


隠れた内面を鳥面に表現し、
素顔を隠して感情を解放しよう
親子三大祭りの合間に参加する親子連れも多く、浴衣姿の子供たちも多いという「美術館で縁日気分」の特徴から、ワークショップ成果品をつけてそのまま親子三大祭りに遊びに行けるようにと、お祭りの出店の目玉の一つである「お面」を題材にしましたが、同時にお面には普段の身分や立ち位置を離れた別人格になれるという特性もあります。
今回のワークショップでは作者の内面をそのまま表現するのは難しいと考え、手掛りとしての3つのキャラクターカードを設定しましたが、その3つのキャラクターの組合せが自分とは全く別物であっても、出来上がった鳥面は作者の内面を通して生み出されたものです。全く別物だと感じれば感じるほど、鳥面を被りポーズをとれば、本人も知らなかった隠れた個性があらわれてくるかもしれません。
自分の知らなかった自分と出会うためのきっかけとして、はたまた素顔を隠すことで感情を解放し人と人とのコミュニケーションを促進させる媒介としての「鳥面」の面白さも、ワークショップを通じて参加者に伝わっていたと感じました。



会場には、NARAMIXさんやスタッフが事前制作した鳥面を展示するとともに、NARAMIXさんの「鳥人間」のパフォーマンスの美しい映像も投影されました。
またWiCANのメンバーにはファシリテーターとして、ワークショップがスムーズに進むように細かな段取りや会場構成の調整を担当していただきました。そして、当日は浴衣姿で鳥面をおしゃれに被って会場を盛り上げながら、参加者の鳥面づくりを優しくサポートしてくださいました。



Text: Yuta Hosoya
協力:千葉市美術館