プロジェクションマッピングをやってみる
この授業は、プロジェクションマッピングをはじめ、映像や光、音を使った作品で世界的に活躍している、デジタルアーティストの冨吉先生の授業です。
まずは冨吉先生が世界でどのように活躍されているかを知るために、ヨーロッパ最大の人工建造物であるブタベストの「国民の館」で行われたプロジェクションマッピングの作品を見てもらいました。
プロジェクションマッピングとは、物に映像を投影する事で、実物と想像を同時に見せて不思議な体験を生み出す手法です。一般的には大きな建物に映像が投影されている様子をイメージすることが多いかもしれませんが、今回の授業では、自分の手元のサイズでプロジェクションマッピングの作品を作りました。
使う道具は紙粘土と紙のスクリーン
今回の授業では通常CGなどで制作される映像部分は、立体感が感じられるよう、陰影ができる紙粘土で作ったイメージをコマ撮り撮影して表現しました。さらに、紙を折り、階段状にしたものがスクリーンとして用意されていました。
紙粘土を使って投影する映像を作ろう
まずは紙粘土を使った映像の制作です。
投影される階段状のスクリーンを真正面から見た形に合わせて紙粘土でイメージを作成していきます。全部で12のシーンを作成するのですが、最後のシーンをはじめに作り、そこからシーンを巻き戻すように粘土を外したり付けたりしながら絵を変形させていきました。これは、ゴールとなる最終的なイメージを見定めてから、そこに向かうストーリーを想像してアニメーション全体を作るというプロセスを体験してもらうためでした。
シーンを変えるたびに撮影をしよう
ひとつシーンができたら、タブレット端末で撮影をします。床に置いて、なるべく真俯瞰から撮影するのがコツ。粘土を付け外ししながら次のシーンを作り、できたら撮影する、ということを12回繰り返し、コマ撮りをしていきました。
頭の中の映像を形にする難しさ
途中、イメージどおりに手が動く参加者もいれば、悩んでしまって手が止まってしまう参加者も。先生やスタッフからアドバイスをもらいながら、最後まで取り組みました。
全体のストーリーを構想したうえで前後のシーンとの連続を想像しながらそれぞれのシーンを作っていってもよいですし、感覚的に手を動かして粘土を移動させ、出来たイメージからの連想で次のイメージを作っても良く、それぞれが得意なやり方で手を動かしながら、12枚のコマからなるひとつの映像を作成しました。
完成した映像を投影してみよう
最後に、完成した映像を一人ずつ再生し皆で鑑賞しました。
ひとつの映像を流すごとに、冨吉先生が制作者に作品のテーマを尋ねます。
短いなかにも自分なりのストーリーを考えている参加者や、意外な世界観で作った作品などもあり、テーマを持って作ることの大切さや、作品作りがいかに自由であるかを感じることが出来ました。
「自分で表現する」ことへの意識
参加者は授業を通し、街中の建築物などの複雑な立体に映像をうつすプロジェクションマッピングのポイントをつかむことができたと思います。例えば、投影する対象がどんなに複雑な立体でも、まずは映像を投影する点から正対して見たときの立面(2次元の面)に対してイメージを作っていくことや、作成するイメージ自体にも影をつけると投影したときに自然に見えること(今回は粘土を使うことで自然な陰影をつけることが出来ました)などです。
今回、実際にプロジェクションマッピングを作る経験をしたことで、そこから新たな興味や疑問が浮かび、この授業を応用して新たな表現を試したくなった参加者も多いと思いますし、プロジェクションマッピングが「見て、楽しむ」だけのものから、将来「自分を表現する方法のひとつ」となった参加者もいたと思います。
世界をまたにかけ巨大な建築に投影する映像を制作している冨吉先生が、そのエッセンスをコンパクトに抽出して下さったことで、プロジェクションマッピングだけでなく映像を作ることの面白さの入口に立ち、新しい世界への扉を開くきっかけとなる貴重な授業となりました。
Text: Takeshi Doi